先日、久しぶりに街へ出たときのことです。
ちょっと混んだ電車で、たまたま目の前の席が空いたので座ろうとした瞬間、
隣にいた20代くらいの女性とタイミングが重なってしまいました。
彼女は何も言わず、ただ少し「座りたい」空気をまとっていたので、
私は自然に「どうぞ」と席を譲りました。
すると彼女は静かにスマホを取り出し、何かを打ち込んで私に画面を見せたのです。
そこにはこう書かれていました。
「ヘルプマークを付け忘れてしまいましたが、席をお譲りくださってありがとうございます。」
私の中で「?」が浮かびました。
——ヘルプマークって、なんだろう。
ヘルプマークとは?
調べてみると、外見からは分かりにくいけれど、援助や配慮を必要としている方が、周囲に知らせるためのマークなのだそうです。
心臓や内臓の病気、人工関節、精神的な疾患、妊娠初期など、
一見わからなくても「助けが必要なときがある」人たちがいます。
ヘルプマークは、そんな方々がバッグなどにつけることで、
周囲の人が「何か手伝えることはあるかな」と気づくきっかけになります。
赤い地に白いハートと十字が描かれた、小さなマーク。
見たことがあるけど、意味までは知らなかったという方も多いのではないでしょうか。
「気づく力」は、思いやりの第一歩
今回、私が席を譲ったのは、
相手が特別そうに見えたからではなく、
「なんとなくそうした方がいい気がした」からでした。
人は言葉よりも、
目に見えない「空気」や「気配」で相手の状態を感じ取ることができます。
この“感受性”こそ、思いやりの原点だと思うのです。
そして、彼女のように「ありがとう」をきちんと伝える行動もまた、
見えないところで世界を少し優しくしています。
私たちにできること
電車やバスでこのマークを見かけたら、
「何かお手伝いできるかな?」と、ほんの少し意識を向けてみる。
それだけで、世の中が少し柔らかくなる気がします。
ヘルプマークを付けている人に限らず、
“気づいた人が、できることをする”——
そんな文化が広がれば、きっと暮らしやすい社会になりますね。